年金事務所から呼び出し(来所通知)が来てしまった!さてどうする?
みなさま、こんにちは!社労士の林です。
先日の台風は凄かったですね・・・私は風で家が揺れる度に目が覚め、よく眠れませんでした。
台風の被害に遭われた皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
首都圏では台風一過、季節外れの暑さですね。熱中症に十分お気をつけください。
さて先日、とある社長様から「年金事務所から呼び出し(来所通知)を受け取った。日時も指定してある。やっぱり行った方がいい?」とご相談を受けました。その会社は一人会社です。
近年、年金事務所は社会保険未加入事業所に対して加入対策に力を入れています。事業規模に関わらず法人は社会保険の加入義務があり、現在は法人番号で加入未加入が検索できるシステムもあります。従って、未加入事業所を探し出すことは容易なのです。
聞くと、今まで電話等で加入のお願いはあったが、呼び出しは初めてとのこと。法律で加入義務があることは知っていたが、「負担が重い」ので入っていなかった、ということでした。
私は社会保険労務士ですが、前職で経理をしておりましたので、肌感覚でその負担の重さはよく知っています。ざっくり言って社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料)は賃金総額の3割程度であり、労使折半負担となるため、労働者側の理解を得る(場合によっては給料の見直しを検討する)ことも必要になってきます。
よくよくお話を聞いてみると、利益は出ているとのこと。そこで、一人会社向けに社会保険加入のメリットを簡単にご説明しました。
①厚生年金は国民年金と比べて、保障が手厚い
国民年金も厚生年金と同様、老齢年金・障害年金・遺族年金と3つの年金があります。
国民年金・・・「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」
厚生年金・・・「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」
年金って、一つだけじゃないんです!
保険料を支払っていることで、上記3つの年金に同時加入していることになるわけです。しかも老齢年金は受給権取得後請求すれば一生涯受け取ることができます。
さて、老齢厚生年金のメリットについては②で説明しますが、障害厚生年金と遺族厚生年金にもメリットがあります。
人生に「もしも・・・」はつきものです。もしご自分が大けがをして障害を負ってしまったり、事故などで不幸にも亡くなってしまった場合に、ご自分やご家族の生活を支える極めて重要な収入源となります。
<障害年金>
国民年金(障害基礎年金)の場合、障害等級1級および2級の障害等級についてのみ支給されます。3級以下の等級だと支給されません。
厚生年金(障害厚生年金)の場合、障害等級は3級まであります。さらに3級に該当しない場合でも、一定の障害の状態にあれば一時金(障害手当金)が支給されます。
<遺族年金>
国民年金(遺族基礎年金)では「子がある配偶者」又は「子」にしか支給されません。対象となる「子」は「18歳年度末までの子」又は「20歳未満で障害等級1級又は2級に該当する障害の状態にあり、かつ婚姻していない子」です。
厚生年金(遺族厚生年金)では、被保険者の死亡当時、その者によって生計を維持していた「①配偶者①子②父母③孫④祖父母」に支給されます(数字は受給順位。最も先順位の遺族のみ受給)。従って、子供のいない配偶者についても受給の権利が得られます。
②将来もらえる年金額が増える
これはよく知られていますね。厚生年金保険料の中には国民年金保険料も含まれていますので、国民年金(厚生年金では定額部分と言います)にプラスして厚生年金(厚生年金では報酬比例部分と言います)が支給されます。厚生年金部分は報酬額が多い人ほど保険料額が多くなっていきますが、その分、受給時には年金額が多くなります。
③扶養が多いと有利
国民健康保険では、世帯単位で保険料負担が発生します。「均等割」「所得割」自治体によっては「資産割」もあります。「扶養」という考え方は無く、世帯構成員の人数と所得によって、世帯に対して保険料を課しています。
健康保険では、以下の条件を全て満たす方は原則として被扶養者として認定され、保険料負担がありません。
その中でも配偶者は「国民年金第3号被保険者」となり、国民年金保険料の負担も無くなります。
(1)被保険者の収入で生計を維持している75歳未満の人
(2)年収130万円未満
(3)3親等内の親族(配偶者・子・孫・兄弟姉妹・父母・祖父母・曽祖父母以外の親族は同居が条件)
従って、被扶養者が多いほど、国民健康保険より負担は少なくなるケースが多いです。
但し、近年は特に「配偶者と子」以外の認定は厳しくなってきています。
組合健保の場合は「扶養できるだけ収入があるか」を厳格に審査する場合もあります。注意しましょう。
④社会保険料の事業主負担分は法定福利費となり、販管費として経費計上できる
利益が出ている状況で、保険料負担をしても赤字にならないのであれば、今すぐにでも加入すべきです。
法人税等を納付し「納税の義務」を果たしていれば、結果的には社会保険の負担もしていることになります(年金や国民健康保険、協会けんぽへ国庫負担又は補助として税金が投入されています)が、同じく支払うのであれば、より直接的に受益できる「保険」へ支払った方が良いですし、法令遵守ともなります。
改めて申し上げますが、法人は社会保険の加入義務がありますので、赤字かどうかにかかわらず加入しなければなりません。法人化は多くのメリットがある反面、それだけの義務も果たさないといけない、ということはぜひご一考いただきたいと思います。
というわけで、社長様には最後に「必ず行ってください」とお伝えしました。
ちなみに・・・呼び出しを無視した場合、どうなるのでしょうか?
年金事務所から調査が入り、加入手続きを指導されます。場合によっては2年間遡って保険料を徴収されることもありますのでご注意ください。
最後までお読みいただいたお礼・・・と言っては何ですが、社会保険へ加入した場合、実際の負担はどうなるのか?を以下の設定に基づきシミュレーションしてみました。興味のある方は参考にしてください。
・自営業の世帯主。年収500万円。
・家族構成:夫(世帯主、45歳)、妻(40歳)、子供2人(小学生と中学生)
・妻の年収は100万円。
・川口市在住
・従業員ナシ
シミュレーションはこちら↓
それではまた!